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歯医者で行われるラバーダムは痛い? 苦しい? 保険は適応出来るの? 元歯科衛生士が解説します!

投稿日:2018年10月7日 更新日:

歯科医院で使われている防湿法の一つ、ラバーダム防湿法は何の目的の為に、どんな治療で使われているのか、メリット、デメリットを踏まえて元歯科衛生士が説明します。

ラバーダム防湿法の必要性

食生活や生活習慣によって個人差はありますが、ヒトの口腔内の唾(唾液)には、1ml中に約300種類の細菌が、7億〜8億含まれていると言われています。

 

そのため、治療する対象の歯を唾(唾液)から隔離、無菌的な状態にして治療を行う方法が実質無料の処置であるラバーダム防湿法です。

 

ラバーダム防湿は、ゴム製のシート(ラバーダム)と金具(クランプ)を装着して防湿していきます。

 

また、ラバーダム防湿法は、唾液以外にも器具などを誤って飲み込んでしまう誤嚥防止にも効果があります。

 

基本的には、歯の根の治療である根管治療や虫歯を削った後に詰めたり、型を取って被せたり行う充填処置、虫歯予防のシーラント充填処置や小児歯科の治療を行う場合に使用されることが多いです。

 

ただ、歯科医院にもよりますが、ラバーダム防湿法で治療を行う際には、歯科衛生士がラバーダム防湿法を用いて、治療する対象の歯を隔離後に歯科医師が治療を行うという流れになります。

ラバーダム防湿法のメリット:根管治療の成功率up

治療する対象の歯を隔離することによって、治療する歯が見やすくなる為、歯科医師がより細かく丁寧に治療を行いやすくなります。

 

唾液に含まれる細菌からの感染を防止するとともに、歯の削りカスや器具などの誤嚥防止、揮発性の薬剤の吸入防止、周辺の口腔粘膜の保護、切削器具による傷害防止などにも繋がります。

 

また、ラバーダム防湿法は、口腔内の湿度を40〜50%に低下することが可能な為、治療する歯の乾燥状態を保持することができ、薬剤や修復材をより良い状態で使用することができます。

ラバーダム防湿法のデメリット:苦しいし痛いことがある

歯並びや歯の形態によっても適応が困難な場合があるため、全ての方に適用されるというものではありません。

 

ラバーダム防湿法に使用されるゴムのシートはラテックスゴムで出来ている為、ラテックスアレルギーをお持ちの方には適応が出来ません。

 

治療中の長時間の間、鼻呼吸をしながら、口を開けた状態を維持するので、長時間口を開けているのが困難な方や鼻呼吸が難しい方には向かない防湿法になります。

 

そして、ラバーダム防湿法の1番の欠点とも言えることが、金具(クランプ)を装着する際と装着後に歯茎に痛みが出てしまう場合があることです。

 

私も実際に、歯科衛生士同士でラバーダム防湿法を行ったことは何度かありますが、痛みに強い方の私でも、金具(クランプ)の圧迫感が強く、本当に苦痛でした。

根管治療とラバーダム防湿法:痛くないZOOという器具もある

根の治療(根管治療)においては、初回の治療でラバーダム防湿を行った場合の根管治療の成功率は90%、ラバーダム防湿を行わなかった場合の根管治療の成功率は30〜50%と言われています。

 

欧米では根の治療(根管治療)を行う際、ラバーダム防湿法を行なっている歯科医院は90%ですが、時間と手間がかかるため、日本ではラバーダム防湿法を行なっている歯科医院は10%程度と、ほとんどの歯科医院では実施されていないのが現状になります。

 

ラバーダム防湿法は、2008年(平成20年)の保険改正で実質無料化した為、ラバーダム防湿を行う歯科医院が減少したこと、痛みを最小限に抑える日本の治療方針も影響しているかと思います。

 

私が以前勤めていた歯科医院では、不快感や痛みがあるラバーダム防湿法の変わりに、ラバーダム防湿法と同等の効果を得られるZOO(ズー)という器具を使用して治療を行うことが多かったです。

 

ZOOはラバーダム防湿法より痛みがなく、着脱も簡単に行うことができる為、ラバーダム防湿法ではなくZOOを活用している歯科医院も多いのかもしれません。

まとめ

ラバーダム防湿法の必要性

  • 唾液1ml中に約300種類の細菌が、7億〜8億含まれている。
  • 治療する対象の歯を唾液から隔離、無菌的な状態にして治療を行う方法。
  • 根管治療や充填処置、小児歯科の治療で用いられる。

ラバーダム防湿法のメリット

  • 治療する対象の歯を隔離することによって、無菌化するとができる。
  • 術野が開けるので歯科医師が治療を行いやすい。
  • 削りカスや器具の誤嚥防止
  • 揮発性の薬剤の吸入防止。
  • 周辺の口腔粘膜の保護。
  • 切削器具による傷害防止。
  • 治療する対象の歯を、常に乾燥させた状態で処置が出来る。

ラバーダム防湿法のデメリット

  • 全ての方に適応させるわけではない。
  • ラテックスアレルギーの方には使用不可。
  • 顎が良い方や鼻呼吸が出来ない方には不向き。
  • 痛みを伴う場合がある。

根管治療とラバーダム防湿法

  • 初回で、ラバーダム防湿法を行なった場合の根管治療の成功率は90%。
  • 初回で、ラバーダム防湿法を行わなかった場合の根管治療の成功率は30〜50%。
  • 根管治療の際に、ラバーダム防湿法を行なっている日本の歯科医院は10%程度で、実施している歯科医院はとても少ない。

 

私が個人的にラバーダム防湿法に対して思うことは、ラバーダム防湿を細菌感染を防ぐ為にも、大切な方法だと思います。

 

しかし、根の治療(根管治療)を行う場合、根は構造上とても複雑に出来ている為、ラバーダム防湿法だけでは、決して完璧には治療が行えないというのが現実です。

 

今まで、他院で治療してきた方のレントゲン写真を見て唖然とすることが多く、その中でも根の治療(根管治療)はとくに酷かったからです。

 

根の管にしっかりと薬剤が詰まっていなかったり、根の管ではない所に穴が空けられ薬を詰められていたりしていることもありました。

 

そんな治療の状態でラバーダム防湿法を用いても、根の治療(根管治療)の成功率が90%の数値を出すことは難しいのではないでしょうか?

 

完全に口腔内から孤立させ隔離することが出来るラバーダム防湿は必須ですが、ラバーダム防湿法の有無よりも、歯科医師の知識と実力が何よりも必要かと私は思います。

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