フィギュアスケートの採点方法の歴史を徹底解説! 結構大きく変わっています。
投稿日:2019年1月24日 更新日:
時代が流れると、色々な常識やルールの改変というのが行われます。
それは野球や陸上といった長く続いていたものや、大勢の人がかかわるスポーツでも同じです。
フィギュアスケートも、ルールや採点方法、競技内容や時間がわずか50年の間に色々と変化しています。
その中で、男女の競技時間も変わりました。
シニアの男子のフリー演技の時間は、2018年から始まったシーズンで4分30秒から4分になりました。
以前、佐野稔や松村充、五十嵐文男が滑っていた1970~1990年代は男子のフリーは5分でした。
1分短くなるということは、楽になったと思う人もいるようですが、ジャンプが一つ減っただけで実際には忙しくなりますね。
ちなみに、当記事以外のフィギュアスケート記事をまとめた記事は以下になります。
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フィギュアスケートの採点ルールの変遷
今のようなフィギュアスケートの採点方法になったのは、意外と最近で2002年です。
それまでのフィギュアスケートの採点は、審判が1人あたり6.0点の持ち点で採点をしていました。
テクニカルメリットとアーティスティックインプレッションの両方をそれぞれ9人の審判が6.0点で採点をし、その点数の合計と順位点というもので、得点がつけられました。
合計が同じ103点/108点中(6.0満点×9人×2)でも、順位点が19の人と22の人では19の人が勝つ、というものでした。
しかし、この順位点のつけ方に問題があり、開催国が有利になったり、審判にお金が動いたりといったこともあり、採点には不明慮な点があると言われていました。
そこで、この採点の方式も「一番良い点数をつけた審判」と「一番低い点数をつけた審判」の得点を使わずに、間7人の点数を合計するという方法が取られたたこともあります。
これは、フィギュアスケートだけでなく体操や新体操といった競技でも行われていました
。例えば、アメリカやカナダの大会では、アメリカやカナダ人が有利になる、逆にソビエトの選手は不利になるということもあり、見ているファンの間からも納得がいかないものでした。
そこで、今のように一つ一つの演技の難易度に合わせて点数がつく方式に変わりました。
試合も、以前はコンパルソリー(規定)・ショートプログラム・フリーの三段階で採点されました。現在は、コンパルソリーは大会では行われていません。
今でも、一流選手の中にはコンパルソリーが得意な人も多く、美しいループやターンを描くことができる選手だからこそ、フリー演技も美しいとされています。
男子フィギュアスケートの得点に影響を及ぼした、男子のフリー演技の短縮
まずは、大会で行われる演技時間についてご紹介しましょう。
まずはシングル男子女子ともに、ショートプログラムが2分40秒、フリースケーティングが4分です。
ペアスケーティングは今でも長いままで、ショートプログラムが2分40秒、フリースケーティングが4分30秒になります。
アイスダンスは、ショートダンスが少し長く2分50秒でフリーダンスが4分になります。
この時間はプラスマイナス10秒までが許容範囲で、これを過ぎても不足しても1点減点されてしまいます。
男子のスケーティングには、次のような演技要素(エレメンツ)を必ず演技する必要があります。
演技の各要素の得点は基礎点とGOE(演技審判によって0をベースとし-5から+5の11段階で評価された各要素のできばえ)によって採点されます。
演技の後、技術審判が演技をスロー再生で確認し、選手の実行した要素が何であったかを判定するため、正確な得点が算出されます。
「ショートプログラム」
ジャンプは3回跳びます。内容は「アクセルジャンプ(2回転半か3回転半)」「単独ジャンプ3回転か4回転ジャンプ」「コンビネーションジャンプ(3回転か4回転と3回転か2回転の連続ジャンプ)」の3種類です。
スピンは3回入れます。内容は「フライングスピン」「単一姿勢のスピン」「コンビネーションスピン(2つ以上の基本姿勢の組み合わせ)」になります。
ステップシークエンスは、リンクを大きく使ったステップを必ず入れます。
「フリースケーティング」
ジャンプは最大7回まで跳ぶことができます。内容は、必ずアクセルジャンプ(2回転半か3回転半)」を入れます。
他に、コンビネーションジャンプ」は最大3回までで、そのうち1回は3つのジャンプを組み合わせることができます。「トリプルアクセル+トリプルルッツ+トリプルトウループ」といったものですね。
スピンは最大3回まで入れることができます。
内容は、「フライング(エントランス)スピン」「単一姿勢のスピン」「コンビネーションスピン(2つ以上の基本姿勢の組み合わせ)」になります。
ステップシークエンスは、リンクを大きく使った長さのあるステップを必ず入れます。
コレオグラフィック・シークエンスでは、イーグルやイナバウワー、スパイラル等々を組み合わせたものを入れます。
これが男子の演技要素になります。
この中で3回転を4回転にしたり、難易度の高いものにすることで点数が高くなります。
4分半の時は、ジャンプが最大8回でしたが、7回に減ったため楽になったと思われがちですが、実際にはジャンプ一つで30秒もかかりませんので、むしろ忙しくなった感じです。
そのため、ジャンプの踏切りにあまり時間をかけずにポンポン跳べる選手が有利になったと言えます。
フィギュアスケート女子のフリー演技は男子と違って難易度が低い
基本的に女子の演技と男子の演技要素で大きな違いはありません。
しかし、女子で4回転を跳ぶ選手はほとんどなく、ジャンプの要素はトリプルアクセルがほぼ最高難度となっています。
ジャンプやスピン、ステップの難易度の得点は女子も男子も同じため、4回転を跳ばない女子は、その分最高得点が男子より女子の方が低いというのが一般的です。
例えば、2018年のGPファイナルでは紀平梨花がショートプログラムの合計が82.51点、フリーが150.61点で優勝しています。
一方、男子では宇野昌磨が、ショートプログラムで92.49点、フリーで183.96点になります。この差が4回転と言えます。
紀平梨花の得点は男子3位のリッツォよりも高いため、紀平の演技そのものは男子の世界レベルでも上位と言えますね。
しかし、2018年暮れのロシアの選手権大会で、4回転を跳ぶ選手、14歳のトゥルソワが現れオリンピックの金メダリストザギトワが女王の座を奪われるといったことになっています。
これからは、女子も4回転時代に突入するのではないか、という見方も出ています。
他にもロシアのジュニアが、「4回転ルッツ+トリプルループ+トリプルトーループ」を跳んだというニュースもあります。
1988年、伊藤みどりがトリプルアクセルを跳んで世界を沸かせてから20年間、女子のジャンプの記録はほぼ止まっていました。
女子に4回転は無理という意見もありました。しかし、いよいよ女子も4回転の時代に突入したのかもしれません。
フィギュアスケートの採点方法ではPCS(プログラムコンポーネンツスコア)が男子と女子で違う!
フィギュアスケートの点数は、
SS(スケーティングスキル):スケーティング技術
TR(トランジション):動きのつながり又は技と技のつなぎ
PE(パフォーマンス・エクゼキューション):演技力
CH(コリオグラフィー):振り付けや構成
IN(インタープリテーション):音楽の表現
の5つの要素を元に総称を演技構成点といいます。
この点数の総称が演技構成点になります。
5項目を10点満点0.25点刻みで採点した合計に、それぞれ規定係数というものを掛けます。
この規定係数が、実は男女の点数の一番大きな違いとなります。
男子のショートプログラムは、点数にすべて「1」をかけます。
フリーは、「2」をかけます。
例えば、男子のA選手の5項目の点数の平均が9点の場合は9×5×1となり45点になります。
フリーの場合は9×5×2で90点となります。
女子は、掛け率が低くなり、ショートプログラムでは「0.8」、フリーでは「1.6」をかけます。
そのため、女子が同じ構成で同じ点数となっても、ショートプログラムは36点、フリーは72点となります。
そのため、男子よりも女子の方が必然的に点数が低くなります。
さらに、TESテクニカルエレメンツスコア(技術要素)を加点して、Ded(減点)(演技時間のオーバーなど)を引いたものが最終的にTSSトータルセグメントスコア(総得点)になります。
そのため、女子で男子と同じだけの点数を上げている選手はかなり高度な演技をしているということですね。
フィギュアスケートにおいて採点の対象とならない演技
しかし、何度跳んでも無効になってしまう演技があります。
2回転の同じ踏切りで、同じ回転数のジャンプは2度までしか挑戦できない、3回転以上の同じ踏切りで同じ回転数のジャンプは2種類を2度ずつまでしか挑戦できないといった決まりがあります。
同じ内容のジャンプを3回跳ぶと無効になってしまいますので、いくら難易度が高くても、いくら得意でも、同じジャンプを繰り返すことはできません。
コンビネーションジャンプとシークエンスジャンプも3回までといった決まりがあり、たくさん跳んだからいいというわけではありません。
そのため、選手は数多くの種類のジャンプを跳ぶ必要があります。これも男女ともに同じ条件になりますので、気を付けましょう。
フィギュアスケートの採点方法の男子と女子の違いまとめ
・フィギュアスケートの採点方法は、ここ50年で大きく変わりました。
・2018年、男子のフリー演技の時間が女子と同じ4分になりました。
・男子と女子の演技の採点方法に大きな違いはありません。女子は4回転を跳ぶことができない、ということから最終的な合計点に違いがありました。しかし、いよいよ女子でも4回転を跳ぶ選手が表れています。
・これから男女の差はほとんどなくなっていくのかもしれません。
現代のフィギュアスケートの採点方法は、とても明確になっています。しかし、次々と新しい演技要素が生まれ、新しいステップに名前が付けられています。
フィギュアスケートが一般の人に認識されるようになってから50年、2回転ジャンプもビールマンスピンもイナバウアーも昔からあったものではありません。
これからも、さらに新しい演技が生まれ得点の基準も変わってくるのかもしれません。
ちなみに、当記事以外のフィギュアスケート記事をまとめた記事は以下になります。
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執筆者:woodbat
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